~お客様からのお問い合わせ~ 神奈川県、F様
先日、結婚20周年記念に数年前購入した普段使いの越前塗りのお椀を落として欠いてしまいました。
思い出の品なので捨てるに忍びなく、修理についてネット検索して御社のブログを拝見しました。
写真をお送りして修理の可否と修理代の概算をお伺いすることは可能でしょうか?普段使いの品なので、修理費が高額になるなら、諦めたいと考えております。
可能な限りもとの状態に戻していただくことを希望しています。
まだまだ春秋の蒔絵も綺麗に入った美しい汁椀
欠けてしまって、本当に残念だったことでしょう。
確かにこんな素敵なお椀を捨てるには忍びないです。
まずは破片を接着します。
欠けた部分を塗るだけでは、その部分だけが目立ってしまい、みっともないため、全体的に内側も外側も塗り替えが必要です。
そのための研ぎの工程です。
接着した部分を平らにするため、境界部分を少し彫ります。
ノミで彫った部分に錆をして埋め、研いで、また錆をして埋め、研ぐといった工程を何回か繰り返して、平らにしていきます。
この作業をしっかりするかしないかで塗りあがりに差がでてきます。
内側も同じように錆を埋めて、研いで、平らにしました。
20日間ほどで、漆の上塗り完成です。
継ぎ目がわからない状態できれいに塗りあがりました。
これは、新品同様ですね。
ここからは蒔絵師さんのお仕事。
夫婦椀のもう一つの絵柄を参考に型をとって、これから全く同じ蒔絵を描いていきます。
線がかなり細いので、同じような線が描けるかどうか少し心配されていました。
約10日・・・
春秋の磨き蒔絵が仕上がってきました。
色合いも、柄もほぼ限りなく同じです!すごい!
線の細さも全く問題なく、完璧です。
内側に描かれた蒔絵も素晴らしい!
☑ 約40日
☑ 8,000円前後
修理代はあくまでも目安になさってください。一つ一つ違います。
蒔絵の量、消し蒔絵か磨き蒔絵か、塗り色、などでお値段もずいぶん変わってきます。
(注) おおよその修理費用としてご紹介しておりますが、修理の方法の他、年々材料費の高騰により変化してます。
ご依頼いただく際はその都度お見積りさせていただきます。ご了承ください。
最初、メールで写真画像を送っていただいて概算で見積もりさせていただきましたが、送っていただいて蒔絵が高価な磨き蒔絵だと判り、改めて見積もりをさせていただきました。
確かな見積もりは、実際に見てからになりますので、概算での見積もりに関しては、参考程度にお考えいただくと有難いです。
今回は、欠けた破片も大事に保管されておりました。万が一破片がない場合でも修理可能ですが、お値段は変わってきます。
先ほど、お椀が届きました。
心底驚きました!!
すっかり元通りです!
絵筆云々と伺っていたので、多少の違いは覚悟していました。
むしろ、自分の不注意の教訓として記念になるかも、と思っていました。
けれども、開封して本当に驚きました。参考としてお送りした夫のお椀と
全く同じ柄、割れた部分の継ぎ目もどこにも見当たらず、完全復活です!
伝統工芸の底力を再認識しました。
手間暇かけて直して使う良さをしみじみ味わっています。
半年は、食器棚の定位置で静かに寝かせ、それから今度はもっと丁寧に
大切に使い続けて行きたいと思います。
修理に携わってくださった職人さんがたにどうぞよろしくお伝えください。
<以下省略させていただきます。>
*****
弊社担当より
お椀が無事に到着し、ほっといたしました。
その上喜んでいただけたようで、大変うれしく思います。
お椀は使ってこそ値打ちのある物です。
とても素敵なお椀ですので、
半年後、永く頻繁にお使いいただける事を願います。
お直しのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。