大阪府、T様より
漆器修理のwebサイトをご覧になってお電話で問い合わせをいただきました。
フタ付のお椀揃いを修理して欲しいという内容で、フタは蒔絵が描かれていてそれほど傷んでいないけれど、身が傷んでいるということでした。
お話を電話でうかがって、塗替え修理はできるけれども、具体的にどのような修理が最適かどうかを提案させていただくために早速送っていただきました。
早速送っていただいたお椀です。フタをして並べてみるとなんと可愛いお椀でしょう。
淡口(たんくち)のお椀に松葉の絵柄がとても素敵です。※淡口とは、黄色味がかった赤色のことを云います。
フタは拝見したところ、漆が痩せていますが、目立って剥げてませんでした。T様いわく、フタはほとんど使ったことがないとか。
身のほうは、ところどころ、漆が剥げて下地の黒がでています。漆も痩せて木の目が見えてきているので、総塗替えが必要です。
ここで一番の気がかりは、色のことでした。フタは塗り替えないけれど、身は塗り替える、ということは仕上がりの赤の色がどうしても違ってしまうということです。漆は特にですが、同じになることがありません。もちろん同じような淡口で塗ったとしても漆の種類や乾き具合で変わってくるのです。
そのことをご了承いただいて、それでも構わないからとおっしゃっていただいたので、修理にかかることになりました。
およそ1ヶ月ほどで、順調に仕上がってきました。さすがに総塗替えなので、新品同様です。
塗りたての朱の漆は少し黒っぽい色で仕上がってきますが、思ったよりフタの色と変わらなかったのが驚きでした。写真ではほぼ判らないと思いますが、比べると塗り替えた身のほうが黒っぽい淡口の朱です。これは予想以上に色の仕上がりが上手くいきました。
半年ほどするとほぼ同じ色になるかもしれません。
漆のお椀は、なるべく半年は使わないで欲しいということを申し上げております。漆の臭いや乾き具合といったところが理由です。
☑ 約1ヶ月 + 当社で1ヶ月ほど置いておきました。
☑ お椀ひとつあたり、3,000円ほど。
※サイズや傷み具合でお値段は変わりますので、あくまでも参考になさってください。
■追記
事情により2016年5月以降、古いお椀の全部塗り直し費用はフタ、オヤ関係なく、一つ当たり4,000円(税抜)前後かかります。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
(注) おおよその修理費用としてご紹介しておりますが、修理の方法の他、年々材料費の高騰により変化してます。
ご依頼いただく際はその都度お見積りさせていただきます。ご了承ください。
今回のように、蓋と身があって、どちらか一方を修理する場合は、漆のつやが違ってしまったり、色が違ってしまったりということがよくあります。
このへんの言葉ではあらわすことが難しい部分を上手く説明できるようになるといいのですが・・・今回はたまたま上手くいった例です。
お椀を送って間もなく、お便りをいただきました。
喜んでいただけたことが何よりも嬉しかったです。
本当にありがとうございました。
*****