DIYが当たり前の昨今、『漆塗りも自分で』と考える人もいることでしょう。
漆は漆を扱うお店やネットで容易に買う事ができますし、自分で漆を塗る事は可能です。
ただし、漆塗りの職人が仕上げるような完璧を求めなければ、ということにはなりますが。
『漆を塗る』ことは『ペンキを塗る』ようなことから比べれば、経験のない人にはいくつかの理由からハードルが高く感じられます。
漆を塗ることは簡単ではない理由①
漆はかぶれることがある
漆の免疫がないと、たいていはかぶれます。
漆を塗った経験のない人は、薄いビニール手袋で素肌に漆が付着しないようにして作業をすることをお勧めします。
場合によっては、触っていなくてもかぶれたという人もいるという話を聞いたことがあるので、充分に気を付けましょう。
また、漆には独特のにおいがあります。(決して良いにおいとは言えません)
日が経つにつれ、においが気にならなくなり、完全に乾けば全くにおわなくなります。
漆を塗ることは簡単ではない理由②
綺麗な仕上がりにならない ※綺麗に塗るためには、漆を漉す必要がある
せっかく安くはない漆で塗るなら綺麗に仕上げたいと思うのならば、漆を漉す作業は不可欠です。
漆の職人は、最後の工程の上塗りをする際に、専用の漉し紙で3回漆を漉して、ゴミやホコリを出来る限り取り除いてから塗ります。
もし、漆を漉さないでそのまま塗った場合、たいていはブツブツのゴミだらけに仕上がりになります。
奇跡的に綺麗に塗れることがあるかもしれませんが・・・
さらに、3回漉して上塗りをする職人でも、ゴミやホコリがつくので、塗り終えてしばらくしてからふしあげといって、鳥の羽の先を尖らせたものなどで、気になるゴミやホコリを一つ一つ取り除いて、きれいな仕上げにしています。
しかしながら、ゴミがついてもその後に「蝋色(ろいろ)」という磨きの作業を行えばブツブツとしたものがなくなって綺麗な仕上がりになります。
蝋色を行わなくても、自分で使う分にはゴミやホコリなど気にならないという人は、全く問題ありません。
漆を塗ることは簡単ではない理由③
漆は厚く塗ると縮る
漆は温度と湿度の管理で乾くのですが、暑い夏など温度が高過ぎると漆の渇きが早くなり縮りやすくなります。
※上の写真の矢印部分のような状態になります。
縮った場合は凸凹を研いで、塗る面を平らにしてから塗り直すことになります。
ただし、縮ったからといって使えないわけではありません。
使う分には問題はないので、自分で納得できるのであればそのままでも大丈夫です。
漆を塗ることは簡単ではない理由 その他
ある程度の専門知識を事前に学ばないと、安易に塗ることは難しい
漆を塗るまでの準備、塗った後の刷毛の洗い方や保管方法を学ぶ必要がある
作業工程が多い
漆を乾かすためには、温度と湿度の管理が必要
乾くまでに時間を要する ※すぐには乾きません
漆の種類によっては、長い間(何年も)そのまま放っておくと腐ってしまい、乾かなくなる
自分で漆塗りをしたいと思われる方は、このようなことを念頭にいれ、是非チャレンジしてください。