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職人の工房より

いろんな漆器の修理を承っていますが、お椀の直しは塗りあがってから、半年ほど経ってヒビが入ったといわれることがあります。

これは本当に厄介なことです。

下地からかなりの手間をかけて直しているので、正直なところ明確な理由が分からず、おそらく強い漆に、劣化した下地が引っ張られてヒビとなって出てくるのだろう、と考えています。

 

職人自身も、自分が手掛けたお椀であれば、どういう下地をして、どういう工程で塗って、というのが分かり、塗り直しにも責任が持てますが、ほとんどの場合(ほぼ100%に近い)、自分が手掛けた漆器の修理依頼はきません。

こういうトラブルが嫌で、修理を嫌う職人もいるぐらいです。

実際、漆器の修理は難しい。

 

とても古いものなら尚更で、下地の劣化が相当なものだったり、ヒビが全体に入っていたりと、傷みの状態も同じものはありません。

下地を全部取って、白木地の状態に出来るものなら、そのほうがずっといいのですが、そんなことはとてもとても・・・

 

先日、職人さんの工房を訪ねたら、たまたま私がお願いしているお椀の修理の作業中でした。

 

お椀の修理
お椀の修理

 

これは、研ぎをした後に、お椀の内側に刷毛で生漆を塗りこむ作業です。

修理の工程のほぼ最初の作業ですね。

 

乾いたら、研いで、下地(漆の錆)の工程に進みます。

錆の工程も1回で終わらない場合もあります。

 

下地が終わったら、中塗り、上塗りをして仕上げていくのですが、とにかく、手間暇かけて、修理と向き合ってくれる職人さんには常に感謝の気持ちでいっぱいです。