私たちにお問い合わせくださるお客様の中には、住んでいるところの近くに修理してくれる漆器店が見つからなかったとか、購入したデパートに修理のお願いをしたけれど出来ないと断られた、とおっしゃる方も少なくありません。
漆器は修理できるということが徐々に知られてきたにも関わらず、引き受けてくれるところがなかなか見つからないという問題も出てきました。
ネットを通して修理のご相談に応じている私ですが、私が感じている木製漆塗りの漆器修理の難しさを取り上げてみます。
修理が出来ない理由とは?
漆器は修理できるというものの、何から何まで出来るということではありません。
私たちにも修理できるもの、できないものがありますし、産地や職人さんによって得意・不得意なものもあります。
職人の数が減っている
全国的に共通していることですが、日本の伝統工芸に携わる職人さんの数は、どんどん減っています。
漆器においても例外ではなく、産地によっては職人がいなくなっていると聞いたこともあります。
漆器産地の職人がいない=その産地の技法を受け継ぐものがいない
越前漆器産地である鯖江市河和田地区には漆器に携わる職人が暮らして漆器で生計を立てていますが、以前から比べるとずいぶん減っていることには間違いありません。
日本人の生活スタイルが変わったことにより漆器自体の需要が減ったことや海外から安価な漆器製品が入ってきたことなどの背景から、弟子を持たなくなり、子供は親の職業を継がないで他の職業に就くなど、後継者がどんどん減っていることが原因です。
10年後は漆器修理を引き受けることが出来ているのか・・・そんなことを思っています。
熟練した職人にしか修理できないものもある
経験が浅い世代の職人では修理が難しいということがあります。
経験は大事で、特に古い漆器は予想もしてないような現象を起こすことがあるため、臨機応変に対応できる職人ではないとできません。
技法が違う
産地独特の技法の違いで、全く私たちの産地の職人は出来ないという場合があります。
ただ、産地によっては全く修理の対応をしていないというところもありますので、こちらの職人が持つ技法での修理を承ることはあります。
風合いなどは変わってしまいますので強くお勧めはできませんが、今後も永く使いたいものであれば、お直しを引き受けることもございます。
手間と時間がかかる
これは、私たちの経験ですが、
最初の見積もりより実際修理にかかると、実は手間や時間に換算すると金額が合わないかもしれない。と思うことがあります。
実際、やってみてこれでは合わないということが徐々にわかってきて、5年前に修理を始めたころより修理費用が上がっているのが正直なところです。
新しく作るものより、漆器修理の手間は相当面倒なものということが私自身も徐々に分かってきました。
それでも、面倒がらずに引き受けてくれる職人、丁寧な仕事をしてくれる職人にお願いしています。
誰にでもできるというものではないというのが実感です。
そういう理由から、修理は対応できても納期に関しては余裕をみていただいています。
急ぎの場合は、ご相談には乗りますが、なかなかご希望に添えることが出来ないので前もってお断りすることもあり、本当に申し訳ないと思っています。