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漆塗りは塗りあげてから育つ

漆塗りと化学塗料の違いは、よほど詳しい人以外それほどわからないかもしれません。

最近では漆塗りに近い仕上がりの塗料もあり、漆塗りかと思うくらいきれいに仕上げる職人さんもいらっしゃいます。

 

今までにも書いていることもあり重複するかもしれませんが、天然素材の漆塗りならではの特長をまとめてみました。

漆塗りの特長

漆塗りは、塗ってから育っていくものだと私は考えています。

天然素材だからこその素晴らしさを漆器修理を通して実感しています。


□ゆっくり乾き、より丈夫になる

天然の漆は、適切な温度・湿度の管理のもと、ゆっくりと乾きます。

漆には独特な臭いもあり、しっかり乾かないうちは臭いが残っています。

 

塗りあがって、手で触れるようになっても、完全に乾いているわけではありません。

私たちは、お椀や重箱など食器の修理のご依頼をいただいたお客様に対して、仕上がった漆器をお返しする際、いつ塗りあがったか、いつ頃使えるのか、といったことをお伝えするようにしています。

 

塗りあがって1ヶ月以内は、まだ漆が柔らかい状態で、使用することを控えてそのまま保管していただくことをお願いしています。

 

最低3ヶ月から半年かけて、より硬く丈夫になっていきます。

 

半年から一年以上経つと、漆の臭いも気にならなくなり、完全に乾燥します。

 

しっかり乾かないうちに使用すると、傷がつきやすく、熱い汁物を入れたときに変色の原因にもなります。

漆はしっかり乾いてしまえば、実は化学塗装のものよりも丈夫だと言われています。

 

 

□経年変化

天然の漆は色が変化します。

 

写真のように、塗って間もないお椀と1年ほど経過したお椀では、外側の溜色も内側の朱色もより明るく変化しています。

 

これは自然の変化のため、色が変わらないようにしたいと思っても難しいことで、むしろ色の変化を楽しんでいただければと思います。

 

時々、元の色と同じ色で塗り直してほしいとおっしゃるお客様がいらっしゃいますが、たとえ同じ漆で塗ったとしても経年変化するという理由から最初は同じ色には仕上がりません。

 

部分修理する場合は、特に朱の漆だと「つぎはぎ」した仕上がりになることは避けられません。

このことを十分にご理解いただく必要があります。

 

 

□つやが出る

漆には、なんともいえない独特の風合いがあるものですが、これは使ってみて実感することです。

毎日使う味噌汁椀を例にとると、手に持ったり、布巾で拭いたりすることで、不思議と艶感が増してきます。

もちろん、毎日触っているとそんな変化もあまり感じないかもしれませんが、使い込むほど愛着がわくのが漆塗りのお椀です。

 

 

□抗菌作用

天然素材だからこそ安心な漆ですが、抗菌作用があるということはご存知でしょうか?

抗菌作用があるということは、お料理を盛り付ける器として漆塗りの漆器は適しています。