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「透ける」漆の特長

漆器の修理は奥が深いと常々思っているのですが、改めて勉強になった出来事がありました。

昨年暮れに塗り直し修理をさせていただいた仏膳や仏椀揃いがありまして、お盆まで使わないということで半年ほど預かって、お盆前にお送りしました。

 

そのお客様から、下記のような質問をいただいたのです。

 

「仏椀全般のフチに下地の黒が出ている。塗りむらが多いように思う。」

 

例えば、↓

確かに、凹凸の凸の部分がうっすらと黒くなっています。

 

これは天然の漆ならではの特長で、私の説明不足でした。

漆は、ゆっくり乾きます。そのため、凹凸があるところですと、へこんでいる方へ自然と漆が動くので、高い部分は漆の厚みが薄くなって下が黒であれば、下の黒が映るのです。

この透けた感じの風合いが漆ならではの良さとも言えますが、知らなければ黒が出て変だと思うのは当たり前のことかもしれません。

 

もし、すぐ乾くような化学塗料であれば、普通に塗っても透けた風合いにはなりません。

逆に、漆に似せた風合いを出すため、下を黒で塗って、その上を朱で塗って、凸の部分を研いで黒を少し出す研ぎ出し塗りをわざとする場合もあるくらいです。

塗りたてと半年経った現在では表情が違う

塗って間もなくは、ここまで透けてはいませんでした。

半年経って、漆も乾き、色も徐々に明るくなっています。

 

通常だと塗りあがった場合はすぐに送ってしまうことが多いのですが、お客様から質問をいただいたこともあって、器の表情がずいぶん変わるんだなということを強く感じることができました。

 

こういうことも、しっかり説明していかなければいけないなと改めて思います。

 

貴重なご質問、ありがとうございました。