上塗り仕上げの後、更に艶を出して仕上げる呂色仕上げ
呂色仕上げとは、漆で上塗り仕上げをした後、ピカピカの艶に仕上げる工程のことを云います。
炭やとの粉や油を用いて、研いで、磨いて、生漆で拭いて、また磨いて、と何度となく細かい工程を繰り返し、鏡のような美しく艶の高い仕上がりになります。呂色仕上げを専門にする職人さんを呂色師と呼んでいます。
写真は呂色仕上げをしたお椀のフタですが、これだけではちょっと判りづらいですね。
漆塗りの漆器はいろんなものが写りこんでしまい、写真撮影が本当に難しく、特に鏡のようにピカピカになった呂色仕上げの漆器を撮影しようと思うと、私みたいな素人にはとてもとても大変です。
呂色仕上げで漆器の擦り傷を甦らせることができる!
※お客様からいただいた写真です。
表面が擦り傷で漆のつやがなくなってしまった文庫のフタです。なんとか少しでも元の艶に甦らせたいという御相談をいただきました。
沈金蒔絵が入っているので、黒の無地の部分だけでもなんとかならないかとまずは粒子の細かい磨き粉で磨いてみました。多少は傷も薄くなり、黒い艶が戻ってはきましたが、やはりこれだけではいまいちパッとしません。
ここはやはり呂色師さんに相談するしかないと思い、持って行きました。
この写真も判りづらくて申し訳ないのですが、手前の黒い無地部分はまだ途中、奥の黒無地の部分は呂色仕上げ、沈金松の部分は触っていません。
この文庫はかなり古い物なので、呂色仕上げの漆で拭いても乾かないから本当の仕上げではないけれど、それでも最初の擦り傷の状態から比べれば、ずいぶんと艶も戻りました。
※沈金蒔絵のところに呂色仕上げができないのはなぜ?
彫って仕上げている沈金部分を、炭やとの粉を使って研いで磨いて仕上げると、彫ってある部分に全部埋まってしまうからです。
そのため、沈金部分は触ることができません。
呂色師さんの手は魔法の手
この手にかかれば、ピッカピカの艶が思い通り!・・・というのはちょっと大げさかもしれませんが、黒くなった指先が呂色師の仕事を物語っています。
こんなガサガサの手とおっしゃってましたが、研いで磨いて拭いて、どんどん艶が蘇る文庫のフタを目の前で見ていた私にはまさに魔法の手に見えました。
職人さんの手って味があって好きだなぁ・・・