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ずっと心に残っていること

ずっと心に残っていること。

 

4月の初めに、完成した修理のお盆を送ったお客様からいただいた言葉がいまだに私の心に残っています。

 

修理したお盆は、こんな感じでした。

修理前のお盆
修理前のお盆

手彫りの味わいのある素敵なお盆です。30年ほど前から使われているそうです。

木肌も見えてきたということで修理の御依頼を受けました。

 

そして、仕上がったのが↓ ↓ ↓

修理後のお盆
修理後のお盆

銀朱に塗りあげました。

 

そして、お客様からの感想は、

 

お盆、受け取りました。有難うございます。
結論から申し上げますと、ただただ漆をべったり上から塗ったような仕上がりで、オリジナルの良いところが全く消えてしまったという感想です。
裏の刷毛目もなくなってしまったし、彫りのいい感じもなくなってしまいました。

 

 

確かに、お客様のおっしゃる通りだと思います。彫りの凹凸の濃淡がなくなってしまったのですから。

私の説明不足がすべての原因でした。

 

以下、私の返信内容です。

 

思った感じに仕上がらなかったということで、残念なお気持ちにさせてしまったこと、とても申し訳なく思っております。
これもすべて、私の説明不足によるものだと深く深く反省しております。
手彫りのお盆を銀朱に塗り替えましたが、
天然の漆で仕上げました。
天然の漆というのは、呼吸をし続けており、変化し続けます。
仕上がり間もないころは、黒っぽかったり、つやが低かったり、濃淡が薄かったりというのが天然漆の特徴です。
空気や光に触れることで、漆は徐々に変化していきます。色も明るくなり、つやも出て、濃淡も出てきます。
この変化が、天然漆の特有のものでもあります。
漆塗りの製品は、何年も何十年もお使いになることで、深い味わいのあるものになっていきます。
仕上がり間もない製品に、何年も使い続けたような深みを求めることはどうしてもできないのです。
日常的に使い続けて、布巾で拭くことなどで、濃淡もでて、○○様のご希望に添えるようなお盆に変化していくことを願っております。

 

 

仕上げてしまってから、いろいろ付け加えたところで、後の始末です。

申し訳ない気持ちだけが残ってしまいました。

 

お客様には申し訳なかったけれど、すごく感謝しています。この教訓を、必ず今後に活かしていかなければと思います。

 

まだまだ、まだまだ、勉強の毎日です。